さいたまスーパーアリーナへU2の来日公演に行ってきました。素晴らしかったです。純粋に楽しんだのはもちろん、それ以上のものがありました。感動、しました。U2がやろうとしていることは、単に大好きなアーティスト、もしくは有名なロックスターのコンサートで、ヒット曲を演奏して楽しませる以上のものだと、はっきりと感じました。あえて言葉にするなら、音楽の力で人間の感情を揺り動かしに来ているんじゃないか、と。
僕はしっかりと揺り動かされ、ライヴ後いろいろぐちゃぐちゃになってたんですが、今強く思うのは「この人達は何て音楽に対して真摯なんだろう」ということです。
U2(特にボノ)は音楽以外の活動でもよく知られていますよね。それは人間として素晴らしいことである反面、ミュージシャンとしては批判の対象にもなることです。僕はそういうの好きな方ですが、それでもボノに対しては、たいがいにした方がいいんじゃない、と思うことはあります。それが偽善でも、慈善でも、かっこつけたパフォーマンスでも無いことは知っています。ただ単に、そうするべきだとか必要だと思うからだという、心から生まれた行動であることは。けれど、やっぱりボノが政治家の隣で笑ってる姿を見るのはいい気持ちがするものではありません。まったくもう、と苦笑するぐらいですが。
音楽で(に限りませんが)何かを伝えるということは素晴らしいことだと思います。けれど、それが単なる手段になったり押し付けだったりするのは嫌ですよね。もちろんU2はそうなっていないけど、誤解されそうな危うい行動をしているよなあ、と思うことがあるんです。例えば今回のツアーで言えば、ライヴ中に世界人権宣言を流したり、スクリーンにアフリカ大陸とアフリカの国旗を写すなんてことをしていることを何の前提も無く聞かされれば、顔をしかめる人もいるんじゃないでしょうか。
さて、やっとライヴの話です。僕はその
世界人権宣言に感動しました。世界人権宣言自体は素晴らしいものですが、普通ロックバンドのコンサートで聴きたいと思うようなものじゃありませんよね。それがね、感動しちゃうんですよ。
どうして感動するのか、いくつか理由はあるだろうけど、まずはU2がこれを本気でやっているからだと思います。大真面目に、真剣に、心の底からやっているんです。非難や冷ややかな視線に負けない、揺るぎない意志みたいなものかな、そういうのは、何て言うか、届くんです。そしてそれが音楽に表れています。世界人権宣言が流されるのはライヴ中盤、"Miss Sarajevo"(ミス・サラエボ)のアウトロでです。悲しい鍵盤の響き、ボノの祈りを込めた歌、すごい曲です。ライヴDVDで観てここで流れるのを知っていたのに、日本語で世界人権宣言がスクリーンに写された時、こみ上げてくるものがありました。たぶん、まるで曲の一部のように存在しているからだと思います。鍵盤の音と調和して余計素晴らしく感じます。
そしてそのままがつんと"Pride (in the Name of Love)"に流れ込んでいく演出には、完全にやられました。
僕がU2に惚れ込んだ瞬間を挙げるならば、映画『
U2 魂の叫び』(Rattle and Hum) での鬼気迫るような"Sunday Bloody Sunday"と、その後の喜びに満ちたような"Pride"を観たときです。その時と全く同じではないけれど、"Pride"のイントロを聴いた瞬間その時と同じような感情が自分の中から浮かび上がっていくようでした。曲も演奏も素晴らしいけど、構成が素晴らしいです。"Sunday Bloody Sunday"や"Miss Sarajevo"といった重いテーマを持つ曲の後にやると、祈りから希望に変わっていくかのように感じるんです。
"Pride"から"Where the Streets have no Name"、"One"という構成は、人気のある曲で、もうU2クラシックスと言っていいぐらいお馴染のセットリストです。どんなツアーでも必ず組み込まれているから、もう10年以上、何百回も繰り返して演奏しているでしょう。これさえやれば満足するだろ? ってぐらいのお客さんへのサービスになっていてもおかしくないです。僕は正直この辺の曲を自動的に盛り上がるよね、ぐらいに思っていたんですが、それが飽きるどころか、凄まじい熱さで新鮮ささえ持って響いてきたんです。
考えてみれば当たり前です。U2には伝えたいことがあるわけですから、いつだって真剣勝負です。だから会場のハンデ(スタジアムなんて音楽やるとこじゃない)や多少の調子の善し悪しなんかに左右されず、すごいライヴになるんじゃないでしょうか。
と言ってもそんな真面目なこと考えてライヴ観てたわけじゃないですけどね。今回は半分ぐらいはかちっとセットを固定して演出に力を入れて、あと半分はけっこう自由にやってていろいろな曲をやってくれて楽しかったです。『
How to Dismantle an Atomic Bomb』の曲をそんなにやらなかったのがさみしいけど("Original of the Species"と"Yahweh"が聴きたかった)、延期した分スペシャルなんだと思えば気分がいいですし、実際すごく良かったです。
DVD『
Vertigo//2005: Live From Chicago』で『
How to Dismantle an Atomic Bomb』の良さは味わえますし、この時だけのU2が観れるのはしあわせです。
僕が観た二日目の11月30日では、"The First Time"をやってくれてどきどきうっとりしました。あんまりライヴではやってないようだけどとても好きな曲です。"Angel of Harlem"と"Disire"が演奏され、ラストを"All I Want Is You"で締める夜は僕にとって特別でした。きっとどんなセットリストでも特別だったでしょうけど。
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『
U218 Singles (初回限定盤)』の初回限定盤に付いてくるDVD『Vertigo//05 Live From Milan』、10曲57分というショートカットされた内容ですが、とても良かったです。期待以上に。
『Live From Milan』は2005年7月21日、イタリア ミラノで行われたライヴです。昨年暮れにリリースされたDVD『
Vertigo//2005: Live From Chicago』のニヶ月後ぐらいですね。
僕が今回のDVD に期待していたのは、そのミラノ公演から1曲、"Miss Sarajevo"がシングル「
All Because of You」に収録されていて、それを大いに気に入っていたからです。7月7日に起こったロンドン同時テロの2週間後のライヴで、それに触れたMCと祈りを込めて歌われる"Miss Sarajevo"を映像で見れるわけです。
詳しくは(詳しくもないけど)……、
過去記事で書いているからいいや。ただ、このMCは曲があってこそ成り立つし、さらに表情があった方がより伝わりやすい(無くても大丈夫だけど)とあらためて思いました。
もちろん他の収録曲も良かったです。ラテンの国で大盛り上がりのU2のライヴが楽しめます。セットリストも『
Live From Chicago』では聴けない曲が5曲入ってますしね。久々にバンドセットでがつんと演奏される"All I Want Is You"の大合唱が素晴らしくて、素晴らしくて。僕はこの曲が大好きでU2を知るきっかけでもあるのです。いつだったかボノも「"With Or Without You"よりいい曲だ」と言ってたような気がします(うろ覚え)。
それとやっぱり新作(といってももう2年前ですが)『
How to Dismantle an Atomic Bomb』の収録曲がすごくいい。これはU2のすごいところです。曲がライヴで進化していくのを聴くのはU2の大きな楽しみの一つですね。"City Of Blinding Lights"とかすごいことになってますよ。ジ・エッジのバック・ヴォーカルはU2の大きな魅力の一つだけど、これもライヴだとさらに良いです。
もともとは映画用に録ったらしく映像もいい感じです。残念なのは全10曲なのでU2のライヴの構成力のすごさを十分に味わえないことぐらいかな。それでもとてもいいものです。
うっかりU2の新しいベスト盤『
U218 Singles (初回限定盤)』を買ってしまいました。今年はこれでベスト盤購入3枚目です(他はPRINCEとR.E.M.)。
現在では、ベスト盤にはアルバム全部持ってるような既存のファンへのサービスとして(もしくはより高いセールスを記録するため)、より高い付加価値が求められるようになっています。付加価値には、新曲やアルバム未収録曲等昔からおなじみのものから、リマスター、最近はやりのボーナスDISC、DVDまで様々です。ちなみにPRINCEとR.E.M.のベスト盤は、本編はちっとも欲しくないのにボーナスDISCにつられて購入してます。特にベスト盤が2枚目以降の場合、やはり付加価値は重要です。
で、U2にとってライヴDVDというのはものすごい高い価値があります。そのライヴDVDが付く『
U218 Singles』は、あえて断言してしまいましょう、とても優れたベスト盤です。どうせならDVDを完全版で分売しやがれという意見は……、U2は様々なテレビ用などのライヴ映像をお蔵入りさせている実績があるのでリリースされただけ良しとするのがいいでしょう。さらにアルバム未収録曲 (The Saints Are Coming) と新曲 (Window In The Skies) が付くんですから。
まあ、それでも注文した時は「買ってしまった」ですね。上記は自分への理由付けです。
でも、届いてびっくり。いつもの普通のプラケース2枚組だと思っていたら、今回は縦長ブックタイプのDVDサイズでした。手抜きジャケットだと思っていたんですが、ブックタイプだとけっこうクールです。さらにそれぞれ曲ごとに見開きで、左側には歌詞とシングルのジャケット、右側にはその時代の写真が。これはかっこいいです。さすがU2、優れたデザイナーを雇っているだけあります。大いに気に入りました。プリンスみたく自分でやって趣味の悪さを露呈するみたいなのも好きなんですけどね。
注目は、リック・ルービン プロデュース、アビイ・ロード・スタジオ録音の新曲"Window In The Skies"でしょうか。何回か聴いただけですが、おまけとしてはいいんじゃないかな、ぐらいです。いい曲のような気もするんですが、どこか乗りきれないというか、引っ掛かるというか。微妙に古くさいような気も。ストリングス・アレンジが好みじゃない感じ。次のアルバムにはぜひ収録しないで欲しいです。まあ、そんな聴いてないので当てになりませんけどね。
そうそう、お約束のビートルズのアビイ・ロードのパロディ写真(アントン・コービン撮影)があって笑えました。
結論は、DVDとアートワークだけで十分満足です。DVDはとてもいいものでした。これについてはまたいつか。
今年リリースされたマーヴィン・ゲイの素晴らしい映像集『
ザ・リアル・シング・イン・パフォーマンス 1964-1981』が、唯一の欠点である「国内盤が高い」という点をすこし克服して帰ってきました。つまり廉価でリイシューです。初回限定生産というのがけちくさいですが、いい話です。Amazonではディスク枚数が1枚になってますが、ちゃんと76年のライヴCDも付くようです。
僕は購入して内容を観たらちっとも高いとは思いませんでしたが、高いからあきらめた人はたくさんいるはずです。いかに素晴らしいDVDなのかを延々と語りたい気もしますが、今は頭が痛いので、発売から半年経った今でもことあるごとに見返している、とだけ。
【LINK】
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ザ・リアル・シング・イン・パフォーマンス 1964-1981 (UNIVERSAL INTERNATIONAL)
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清志郎 がん告白後初!飛び入り熱唱 (Sponichi Annex)
その姿勢には敬意を、そしてサイクリストとして好意は持っているけれど、僕は忌野清志郎さんの音楽を特に好んでいません。フジロックで見たライヴは楽しかった気はするし、嫌いではないんだけれど、積極的に聴きたいとは思ってません。
でも、それはそれとして、この夏彼が喉頭癌になったことを知ったときは、良くなって欲しいと思いました。
今回は、サム・ムーアのライヴに闘病中の清志郎が飛び入り参加したというニュースです。え? サム・ムーア来日してたんだ、という方をメインにしてしまいところをぐっとこらえ、リンク先の写真のサム・ムーアと握手する清志郎、すごく嬉しそうです。そりゃあそうだろうなあ。
このスポニチの記事によると、サム・ムーアが当日いきなり誘ったみたいです。普通病人として遠慮しそうなところを、そこをあえて誘うサム・ムーア。写真の清志郎さんの表情を見れば結果どうなったかはよくわかります。いい話です。
たまには日記っぽくやってみましょう。
今日、タワーレコードに行ってきました。CDはオンラインで買う方が多いんですが、店舗の方も楽しいですし、いろいろ発見がありますから。
とりあえず目についたのはオアシスのベストアルバムとTHE WHOの新譜『
Endless Wire』です。
オアシスはスルーするとして、驚いたのはTHE WHO。2人になった現在でもこんなにプロモーションされてるんだ、と。さすがです。再評価、再結成、ウドーのイベントで来日までしちゃった話は知ってましたが、この新譜がこれほど注目されてるとは思いませんでした。
THE WHOの棚を見てみたら、旧譜の国内盤(廉価)のリイシューがぎっしり。うん、これがTHE WHOの評価のされ方だと思います。そしてさすがユニバーサルです。ユニバーサルのいいところの一つは、資本力を生かした積極的な廉価リイシューです。
といっても新譜は買いませんでした。驚いただけです。
さて、ワールドミュージック・コーナーで目についたのがローリング・ストーンズのエレクトロ・ボサノヴァ・カヴァーアルバム。ポップもついてて、アルゼンチンのレーベルが出してるらしくちょっと面白そうです。2種類あったのでどっちか買ってみようかと悩んでいたら、なんと隣に同じシリーズのボブ・マーリー版『
Bossa n' Marley』があったのでそっちを購入しました。別に必要だとは全く思わないんだけど、ボブ・マーリーとあっては仕方ありません。
今この『
Bossa n' Marley』を聴きながら書いてますけど、なかなか面白いし、楽しいです。よくあるB級トリビュートアルバムよりはかなり上で、やっぱりちょっとB級ってところでしょうか。エレクトロ・ボサノヴァというアイディアが良いと思います。曲はもちろん名曲ばかりです(ボブ・マーリーですから)。
ちなみにジャケット画像はストーンズのもので、ボブ・マーリーのは同じデザインで水着がジャマイカ国旗柄、おなかの下の方にボブ・マーリーのタトゥー入りです。持っているカクテルはきっとカイピリーニャですね。昔めちゃめちゃ作りました。けっこう大変です。
このシリーズ、ストーンズの方は第2弾が制作されてるし、2枚分セットの『
Bossa n' Stones, Vols. 1-2』も発売されているので人気あるみたいですね。
"Tower of Song" Leonard Cohen & U2
from『
Leonard Cohen: I'm Your Man』
"Tower of Song"は、ひとり歌の塔に取り残され、ハンク・ウィリアムズに孤独について尋ねる変な人(レナード・コーエン)の歌です。確かに孤独について尋ねるならハンク・ウィリアムズはうってつけです。ハンク・ウィリアムズという人は……(本筋と違うことを延々と書きそうなので略)。
ええと、"Tower of Song"は、バナナを食べるコーエンが目印のアルバム『
I'm Your Man』(1988) 収録のレナード・コーエンの後期の代表曲のような存在の曲です。それをレナード・コーエンの映画のために、U2とレナード・コーエン本人が共演カヴァーをしたわけです。
で、この曲、どう考えてもデュエットできるような曲ではありません。それにいかにもレナード・コーエン口調な感じのメロディなので、ボノには合わないんじゃないかとも思ってました。どうするのかなって思ってたら、U2をバックに普通にレナード・コーエンが歌って、ボノはバック・ヴォーカルとブリッジのみを歌うという、とても無難だけど最適な共演でした。
サウンドはちょっとアンビエント入った感じのU2サウンドです。あえて比べるなら、サントラ『
The Million Dollar Hotel』のサウンドに近い感じかな。明らかにU2サウンドなんだけど、"Tower of Song"の雰囲気とよく合ってます。歌うのは深みを増した今のじじいレナード・コーエン。この組み合わせ、意外と面白いです。なかなか良いですよ。
うん、U2のサウンド・アレンジはとてもいい感じだし、レナード・コーエンは本人ですから文句無しです(当たり前)。ボノが歌うブリッジもとてもいいです。でも、組み合わせる意味ってあるのかな、とすこし思うのです。結局映画の演出としては優れているだろうけど、音楽的にはそれぞれでやった方がいいように思いました。
多分僕は、どうせなら全部ボノが歌うようにアレンジして、徹底的にU2としてカヴァーして欲しかったんです。だってレナード・コーエンのオリジナルは、足すものも引くものの何も無いような、本当に素晴らしい曲なんですよ。カヴァーする意味はいろいろあるでしょうが、オリジナルとは違った魅力を引き出そうとするのが理想だと思います。
でも、これは映画のための共演ですからこれでいいんでしょうね。映画で観たらまた違った感想を持つかもしれません。
アルバム自体は、現役実力派シンガー・ソングライターたちのカヴァー集なのでいい感じです。こういうのはいわゆる「セレブ」度が低い方が面白いと思います。U2とレナード・コーエンの共演もいいのはいいんですよ。やっぱりレナード・コーエンはバックに女性をはべらしてた方がらしいと思ってるだけかもしれないですね。
U2の来日公演までもうあと2週間なんですね。実はすごい楽しみにしてます。
で、11月18日(土)に、その来日公演の追加発売があるようです。サイド指定S席が10000円です。サイド指定は人気がある公演の常とう手段ですよね。人気あるようで良かった、良かった。人気がないと次回またスキップされますから(気が早い話ですが)。
行ってみたいと思っているけれど、もう一万円の席は無いし、一万5千円はちょっとU2には出せないと思っている人は、検討してみたらどうでしょう。
http://info.pia.co.jp/et/promo/music/u2.jsp